── ティアーズ・トゥ・ティアラIIは全体的に明るい印象が感じられます。逆に押切先生といえばハイスコアガールやピコピコ少年以外ではホラー系の暗い系の印象が感じられます。このあたりについてなにかこだわりとかあるのでしょうか。
下川 確かにティアーズ・トゥ・ティアラIIは全体的に明るい雰囲気です。幸せになれる話ですし、心あたたまる話になっています。
押切 逆に不幸せになるシミュレーションゲームとかどうですか?
下川 それはないです(笑)
このあたりについては市場のニーズという面もあると思いますが、ニーズを追いすぎると視野が狭くなってしまい、作れるゲームの幅も狭くなってしまうんですけど、仕事なので売れないとダメという面もあるじゃないですか。
例えばシリーズの続編であれば、ファンの声にできるだけ応えたいという気持ちはあるのですが、状況に応じた判断をしなければならないですね。
押切 そのとおりですね。
下川 ただ、最初は“作りたいもの”を優先ですね。そこで会議を重ねて、じゃあ今の時代で“受けるもの”はなんだろうという話が出てくる。気をつけているのは“作りたいもの”と“受けるもの”の立場が逆転しないことです。
押切 漫画でもそうなんですよ。好きか嫌いかがはっきりわかれることが多いですけど、作家が好きだと思うものを描かないと読者はすぐわかってしまう。ハイスコアガールも僕がゲームを大好きだからこそ、読者の方へ魅力が伝わったのかなと。
下川 ゲームでも漫画でも、どこかに作り手の気持ちが出るんでしょうね。
── それはティアーズ・トゥ・ティアラIIにも出ているということで良いですよね?
下川 もちろんです。ファンタジーロマンというものをベースにおいて、奇をてらったことをせず、仲間ができて、強大な敵と戦う。それでいいじゃないかと。あとはゲームの各部を丁寧に作ることで魅力的なゲームに仕上がっていると考えています。
── 押切先生についてはホラーなど暗い系の作品も目立ちますがいかがでしょうか。
押切 暗い系というかずっと心霊にハマっていたんですが、最近は心霊離れが進んでいます。
下川 自分の中で、心霊離れが進んでいるということですか?
押切 そうです。お化けとか言っている場合じゃないと思いまして。昔からお化けとか幽霊が出てくる映画が大好きだったんです。でも最近はもっと面白いものもあるはずだと思いまして。
下川 心霊ものとか悲恋ものとか、全体的に暗いお話というのは経済が豊かだと好まれる気がしますね。実生活が充実していると受け入れられやすい。
例えば学生で親のおかげで学生生活を楽しんでいるときは友達と集まって心霊話で盛り上がるけれど、大人になって実生活が充実していないとそういうものを見たくないんじゃないかなと思いますね。
押切 そうですね。僕はずっと暗い系の漫画を描いていましたが、ハイスコアガールを描いたらあまりに反応が違ったんです。ずっと留まっていたのが大きく進んだ感じで。
心霊離れはそれも関係していると思います。みんな美しいものを見たいんだなと思いましたね。
下川 僕はいわゆる酷い物語の中にしか書けないキレイなものがあると思っているのですが、最低限の時代のニーズに合った中で、作りたいものと面白いと思ってもらえるものを作るべきかなと。
極端な話、ケーキが食べたい人が多い中で、「どうぞ辛口ラーメンです!」というのは違いますからね。
ちなみに車でも不景気だと明るい色の車が売れるらしいですよ。
押切 まわりを意識して視野が狭まらないように気をつけながら良いものを書いていきたいですね。
ミスミソウという暗い系の漫画を描いていたんですが、最初の装丁は黒だったんです。そのあと復刻して白の装丁にしたら最初より売れたんです。
装丁の色をかえるだけであんなに違いが出るとは思わなかったですね。
下川 そうですね、ゲームでもパッケージのデザインは手に取っていただくために重要ですよ。
ちなみに押切先生は漫画のネタというかアイディアはどのように集めているんですか?ゲームに影響を受けたりとかします?
押切 漫画、映画、ゲーム、色々なものに影響を受けているとは思うんですが、結局自分の中で構築して作るので、これといって思いつくものはないですね。
ハイスコアガールも“押切=ホラー”のイメージを脱したいという気持ちもあってムキになって描き出した作品ですが、これはゲームに影響されたということですかね。
── 影響で言えばハイスコアガールは確実にゲームに影響されていますよね。
押切 影響どころかゲームそのものですからね(笑)
ハイスコアガールはそのゲームを作っている方々にも見て欲しいです。ゲームのおかげでハイスコアガールの美しいストーリーが成り立っているので。
── 例えばゲームにハマったらその影響が出たりしますか?
押切 そうそう、出ることがあるんですよ。
下川 それはティアーズ・トゥ・ティアラIIをプレイしてもらわないと(笑)
押切 作品内に急に剣が登場したりするかも(笑)