ストーリー

-introductory chapter-

冷たい風を震わせて、歌が聴こえてきた―

夕暮れの音楽室で俺が奏でるギターに合わせる ように。
隣の教室で顔も知らない誰かが奏でるピアノに 合わせるように。
屋上から響いてきた、鈴が鳴るように高く澄んだ その声は、バラバラだった俺たち三つの旋律を 繋いでくれた。
始まりは、そんな晩秋。
そのとき、誰かが誰かに恋をした。
誰もが一生懸命だった。
誰もが強い気持ちで突き進んだ。
誰もが、ひたむきに、まっすぐに、正直に―
心の底で結ばれ、かけがえのない瞬間を手に入れた。
だからそのとき、誰かが誰かに恋をしてしまった。
一足遅れの、してはいけない恋を。
そして冬―降り積もる雪は、すべての罪を覆い隠し。
やがて春―雪解けと共に、すべての罰を下す。