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■巻ノ三「深山の鍔鳴」

トゥスクルの郊外、深緑を貫けた先。 穏やかな山の自然が広がる地に、その恩恵を楽しむ者達がいた。 木陰で昼寝をするアルルゥと、渓流に糸をたらすハクオロとトウカだ。 「この川には、ヌシがいるそうだぞ」 ハクオロの冗談めいた話を真に受けたトウカは、 川のヌシを釣り当てようと一念発起する。 そして、ハクオロが政務に戻った後も釣りを続けるトウカの前、 遂にヌシと思しき巨大な魚影が現れた。 巨大魚との格闘の末、 下流へと流されてしまったトウカとアルルゥは 城への帰り道を見失ってしまう…。 携行していた腰刀もなく、一抹の不安がよぎるトウカだったが アルルゥを守ることを決心し、二人は城へ戻るため道なき道に踏み出した。 一方、城に戻らないトウカ達を捜しに出たのはオボロとドリィだ。 広大な山中にも関わらず、直ぐに彼女達の居場所を突き止めたオボロ。 しかし、トウカの空回りする行動見たさに しばらくの間、二人の様子を遠くから見守ることにするのだった。 そんな彼らとは無縁の場所で、地を震わす程の大きな蠢きがあった…。



■巻ノニ「秘恋の処方箋」

それは、一日の始まりを待つトゥスクル城内。 空が明るさを持ち始めた頃。 人気のない倉庫から不思議な光を見たエルルゥは、 中を確認しようと恐る恐る覗き込んだ。 エルルゥが見たのは、土下座をする不審な二人組みだった。 一人の男と一匹のキママゥは、エルルゥに詰め寄ると 転移の術法で彼女を連れ去ってしまうのだった…。 歓楽街で居酒屋を切り盛りする女将カムチャタール。 先ほどの二人組みは、彼女に仕えるノポンとゴムタであった。 彼らは、主人の”ある病気”を治してほしいため、エルルゥに頼ってきたのだ。 聞くも涙、語るも涙の事情をノポンから聞かされたエルルゥは、 彼女のために秘伝の薬を調合することを決意する。 しかし、エルルゥの申し出に難色を示したのはカムチャタール自身だった。 果たして彼女が患う病とは? 一方城では、朝食の時間になっても 姿を見せないエルルゥの身を皆が案じつつあった。 そんな中、ベナウィは倉庫であるものを発見する…。



■巻ノ一「望楼の子守唄」

トゥスクル國では、今日も穏やかに時間が流れている。 やわらかい風に乗り、遠くから聞こえてくるのは 城内を駆ける少女達の足音と、兵士達の訓練の掛け声。 そして、赤子の泣き声と子守唄・・・。 数日前、城の外へ出掛けたハクオロとウルトリィは、 街で赤ん坊を保護することになった。 フミルィルと名づけられたその子の身元調査を進める間、 城の者達で世話をしているのだ。 その中に、とりわけ母親のように世話をするウルトリィがいた。 夜、物見櫓に一人佇む者がいた。カルラだ。 最近のカルラは、ウルトリィとの晩酌をなかなか実現できずにいた。 赤ん坊にかかりきりになっているウルトリィを、ただ、何も言わずに見守るのだった。 日に日にフミルィルへの愛情を濃くするウルトリィを他所に、 一方ではフミルィルを親元へ返す手筈が進みつつあった。 カルラは思う。親子のあるべき姿、家族のあるべき姿を。 その矢先、ウルトリィがフミルィルを連れて逃げ出したという報せが入り・・・。 トゥスクルに吹く風が運んだ、ひとつの物語。 ウルトリィとカルラ、それぞれの想いと葛藤の向こうに酌み交す杯の味は如何なるものか。