WHITE ALBUM2 幸せの向こう側

ストーリー

introductory chapter

冷たい風を震わせて、歌が聴こえてきた――

夕暮れの音楽室で俺が奏でるギターに合わせるように。隣の教室で顔も知らない誰かが奏でるピアノに合わせるように。屋上から響いてきた、鈴が鳴るように高く澄んだその声は、バラバラだった俺たち三つの旋律を繋いでくれた。始まりは、そんな晩秋。そのとき、誰かが誰かに恋をした。誰もが一生懸命だった。誰もが強い気持ちで突き進んだ。誰もが、ひたむきに、まっすぐに、正直に――心の底で結ばれ、かけがえのない瞬間を手に入れた。だからそのとき、誰かが誰かに恋をしてしまった。一足遅れの、してはいけない恋を。そして冬――降り積もる雪は、すべての罪を覆い隠し。やがて春――雪解けと共に、すべての罰を下す。

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